ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-





燈は里でも優秀だということで愁の従者に選ばれたのだと私に教えてくれた。


…最初こそは燈に全く心を開いてくれなかった愁だったけど、次第に心を開いてくれるようになったこと。風邪を引いた愁の寝ずの看病をした燈に、初めて愁が笑ったこと。
それらを語る燈の声が心地よくて、私はいつまでも聞いていたかった。



「―――あの方は次期頭領として相当の努力をなさっています。例え瞳の色がどうであろうとも関係なく、私は最後まで愁様をお守りします。…私があの方を頭領にしたいのですよ」




(………愁)



「一人でも、燈みたいな人が愁のそばにいてよかった」


そうつぶやいた私に、燈は日が傾きだした空を見上げる。





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