ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
(捕まったんだ…)
そう思うまでに時間はそうかからなくて、私は上半身だけを起こして恨めしげに天井から吊された鎖をにらんだ。
…誰の仕業?
なんて考えて、思い当たるのは一人だけで。
不意に愁の声が甦る。
…私に毒を盛った相手。
「…梗」
「おや、僕の名前をご存じでしたか?」
独り言のつもりだったのに返事が返ってきたことに反応した私が部屋の入口を見ると、そこにはにっこりとほほえんだ男の人が立っていて。
「あなたが、梗…?」
返事の代わりにわざとらしくお辞儀をした彼の瞳は、獣のそれだった。