ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
「―――ゃ、あ…!」
せめて声でだけは抵抗しようと口を開いた瞬間、荒々しく舌がねじ込まれてきた。
私の意思なんてお構いなしに暴れ回っている。
(………や、嫌!)
愁じゃない。
愁のはもっとあったかくて優しかった。
―――怖い、助けて!
溢れるように頬を流れていく涙が畳に落ちて染みを作った頃、ようやく梗は離れていった。
「…な、んで」
「兄様に見せつけてやりたくて。―――ねぇ、愁兄様?」
梗がそう言った次の瞬間、部屋の入口がカタンと鳴るのが聞こえた。