ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
君は泣く
―――そこからの愁の動きたるや、まるで鬼神の如しだった。
「燈!」
そう声を張り上げた次の瞬間、どこからか燈が現れ即座に菜々美の処置に当たる。
愁はそれを横目で確認するとすぐさま梗に刀を向けた。
「………許さぬ」
静かな怒りを含んだ声と同時に刀を振り下ろし、迷いのない太刀筋は梗の利き腕を切り落とす。
断末魔の悲鳴と、それを見下ろす冷たい瞳。
…菜々美の意識がないことが救いだ、と燈は感じていた。
「捕らえろ。あとは頭領に一任する」
愁がそう告げた瞬間、幾人もの屈強な男たちが未だ叫び続ける梗を連れて行った。