ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
菜々美の肩から抜かれた刃。
どうやらそれには斬った人物の生命を奪う呪いが架けられていたらしく、傷口が紫色に変色しかけている。
それを発見した燈は焦りを隠すこともせずに処置に当たっていた、が。
「…愁様!?呪いの傷が…癒えていきまする!」
肩で息をしながら連れて行かれた梗の背中を目で追っていた愁は、その言葉に弾かれたように菜々美のそばに駆け寄ると、粉々に砕け散った金属片を目にして。
「我の印を刻んだ指輪を渡していた。…余程強い呪いであったのだろう、砕け散っておるわ」
愁はそうつぶやくと、涙で濡れた菜々美の頬に手を伸ばす。
…でも、触れようとはしなかった。