ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
血で赤く染まった自分の指先。
腕に残る、人を斬った感覚。
―――こんな我はぬしには触れられぬ…
そう思った愁は伸ばしていた手を引っ込めて、菜々美と燈に背中を向けた。
「…我は頭領の元に向かう。後は任せた」
「愁様!………よろしいのですか」
必死な燈の問いかけに答えることなく、愁はそのままこの社をあとにする。
「菜々美。…すまぬ」
そう言って社の外でしゃがみ込む。その瞳には、うっすら涙がにじんでいた。