ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
救われてたんだ。
本当なら1人で過ごすはずだった夜。
会話はなくても1人じゃない。それがどんなに嬉しいことだなんて、この猫にはきっと伝わらない。
「………ありがとね。キミのおかげで、さみしくないよ」
だから、そう言って私は猫を抱きしめた。
溢れて止まらない涙はせっかく乾いた猫の毛をまた濡らしてしまう。そう思ったのに、それでも止まらない。
「お母さんがね、死んで。今日見送ってきたの。キミに会わなかったら、私は独りぼっちだったよ」
猫は何も言わない。
それでいい。
ただあったかいだけで、私を安心させてくれる。