キンモクセイ

「いらっしゃいませー!」

夜10時近くに少年が丸腰でコンビニに入ってきたら怪しまれるだろうかとドキドキしたが、若いお姉さんが元気よく迎えてくれたことに安堵を覚える。

「只今唐揚げが20円引きでーす♪是非ご賞味くださーい♪」

腹が鳴る。夕飯を食べようとした時に起こったケンカでそのまま家を飛び出したので、すこぶる腹が減っていた。唐揚げの値札を見る。140円と書かれた値札に赤くバツ印が付き、その下に手書きで120円と大きく太く書いてある。
だがダメだ。俺は家出をして120円しか持っていない。そして寒い。コンビニではライターを買うつもりで入った。心の中で葛藤する。ライターだ。ライターを買いに来たんだ。そしてどこかの公園のゴミ箱を漁って、捨てられた雑誌に火を点け暖を取る。…完璧!
鳴り続ける腹を抑えながら、レジに向かう。

『すみません!!』
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