天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜

紙切

「カード…」

ぽつりと呟いた明菜は、少し首を捻った。

明菜が知るカードの意味は、異世界で、魔法を使う為に必要とだけだ。

「守口舞子がいうには、このカードは、進化を促進するらしい……つまり、普通の人間を、化け物に変える切っ掛けをくれる」

「切っ掛け…」

「ああ…」

神野は頷き、

「だから…こいつは、配られた。要注意人物や…興味を持った者。生まれ変わる切っ掛けを与えるアイテムとして…ネットに流してね」

「ちょっと待ってください!そんなことをしたら…」

「いいんだよ…」

神野は、上着を着始めた。
右手は、包帯で念入りに隠す。

「炙り出す為に、進化始めた頃なら、ほとんど人間と変わらない。銃で、殺せる」

神野は、警察官の姿に戻る。

「こ、殺すって……」

絶句する明菜に、神野は肩をすくめ、

「俺達も知らなかった…単なる検挙だと思っていた…しかし…」






研究を続ける沙知絵のもとに、次々にサンプルが届けられた。

人から…完全に変化するまでの…数人のサンプル。

「素晴らしい!」

中村は感嘆した。診察台に並べられた人達の中身を、確認しながら、

「これまでは、ある程度変わるまでは、判断できなかったが……なるほど!こうやって、変わっていくのか」

学者達が、忙しく動き回る中、

1人冷静に、様子を伺う舞子は、クスッと笑った。

「いやあ〜素晴らしい!これでわかるかもしれない!進化する者と、しない者が!」

「頑張って下さい」

舞子はそう言うと、1人顔をしかめている沙知絵に、近づいた。


「ひどい…」

ここに並べられた人々のほとんどが…何の罪もない。

生態がわかるからと言って、彼らを騙し、殺し、

そして、解剖することが、国家のやることなのだろうか。

沙知絵は、自分がやろうとしていることに、疑問を持っていた。
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