天空のｴﾄﾗﾝｾﾞ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜

｢ある……女……？｣

沙知絵の目が、半分閉じられていく。

｢そうよ｣

舞子は右手で、沙知絵の顎から首にかけてを、愛しそうに撫でた。

｢その女の名はね…｣





次に、沙知絵が目を覚ました時、

再び沙知絵は、死体が並ぶ安置室にいた。

｢早速、開発を進めてくれたまえ！期待しているぞ｣

目の前にいる中村の激励に、はいと反射的に頷いた沙知絵に、満足したのか…何度も頷きながら、中村がその場を離れた。

自分の研究室へと、ぼおっとした頭のまま戻っていく沙知絵。

その瞬間から、彼女の苦悩が始まった。





｢沙知絵は……完全に化け物になる前に、俺に腕をくれた……いや、違うな｣

神野は、首を横に振った。

｢美化はやめよう…。俺の腕を食い千切り…一口食べた時…彼女は、気付いたのさ…。そして、人である最後の時間を…俺の手術に当てた｣

神野は、沙知絵の手で怒りを表した。拳をつくり、明菜に見せた。

｢俺は…沙知絵を殺さなければならない。化け物になったあいつを！あいつの腕で！｣

怒りと…そして、すがるような目で、明菜を見、

｢俺に、力を貸してくれ！俺には、時間がないんだ！｣

神野はもう一度、上着を脱ぐと、明菜に肩口の接合部を見せた。

沙知絵の腕と神野の肩をつなぐ接合部……そこから上、

神野の肩口が、変色していた。

｢俺の体は…汚染されていく…。俺は、一年も保たない｣

ｷｯﾁﾝで立ち尽くす明菜に、玄関の板の間に、神野は額をつけて、土下座した。

｢お願いだ！あんたの剣を、俺に使わしてくれ！！｣

あまりの迫力に、明菜は息を飲んだ。

それから、胸をぎゅっと抱き締めると、明菜は神野に近づき、

ゆっくりとしゃがみ込むと、神野の沙知絵の手の上に、手を置いた。

｢一つだけ約束して下さい｣