天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
神野の手を握り、明菜は言った。

「命を大切にして下さい」


神野の顔を上げた。

思い詰めた顔で、神野を見つめる明菜。

「約束して下さい」




「わかった。約束する」

力強く頷いた神野の瞳の奧を見つめた後、

明菜は微笑んだ。

神野の手から、手を離すと、明菜は立ち上がり、

「もう一つだけ教えて下さい。さっきの怪物を…あなたは、人の進化と言いましたが…あたしが知るかぎりでは、彼らの姿は、人によって違うのでは、ないですか?」

神野は、右手に手袋をすると、

「…よく知らないが、人というサナギの殻を破り、生まれ変わった時…人であったときのアイデンティティーで、姿は自由に変わるらしい」

神野は、そう言いながら、明菜の鳩尾にまた手をやり、次元刀を引っ込抜くと、そのまま刃を回転させ、後ろのドアを突き刺した。

ドアから抜くと、鉄製のドアには傷一つついていないが、

扉の向こうにいた化け物は、斬られ、絶命した。

ドアを開けると、ザリガニに酷似した化け物が、倒れていた。


「そんな中で…進化しても、人間とまったく変わらない者が、いる。それは…劣っているのではなく、寧ろ逆だ」

念の為、神野は死体の頭を突き刺した。

「変わることない…揺るぎない心。人は、肉体は弱いが…姿形は…完成品に近い」

さっきのように、死体を空間の狭間に捨てると、

神野は、明菜の中に、次元刀を戻した。

「人の姿のまま…空を飛び、目に見えないものを見、銃などにも、びくともしない存在こそ、究極だ!なぜなら…」

神野は、明菜を見据え、

「人は、神の姿を真似て…つくられたのだから…」







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