天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「神の姿…」

明菜は呟いた。

(アダムとイブ)


神野は、明菜をじっと見つめながら、

「人と同じ姿をし…空を飛び…死ぬこともない。そして、人間を餌とし…人間を滅ぼす存在…。俺が、真っ先に浮かんだのは…バンパイアだ…」


「バンパイア…吸血鬼…」

「そうだ」

神野は、腕の感触を確かめていた。次元刀を使っても、違和感はない。

「だったら!」

明菜は思わず、声を荒げた。

「この世界は、バンパイアに…進化した人間は、バンパイアになるの!」

「違うな!」

神野は否定した。

「そのような存在は、何人もいらない!人が、今世界に君臨しながら、こんなにいるのは…個が弱いからだ!弱いから、増えた…」

神野は、自分の肩口に触れ、

「神は…1人しかいらない」

浸食されていく自分の体を、握り締めた。

「今まで…ただ進化するだけだった…やつらが、最近統制が取れてきている」

神野は、明菜から視線を外し、虚空を睨んだ。

「やつらを率いる…神が生まれたのさ」




中村は、沙知絵にこう告げていた。

「我々…人間は、神が生まれるたびに、目覚める前に、総力を持って、葬って来た。虐殺…戦争…核等…それは、人に紛れた神を殺す為だった…」

「神を…殺す」

唖然とする沙知絵に、中村はにやっと笑った。

「祈っても無駄だよ。豚や牛が…神に助けてくれと、祈っても…毎日、誰かに食べられているだろ?それと同じだ…。我々を助けてくれない」

中村は、天井を仰ぎ見て、

「我々は、劣等生物だからだ!食物連鎖の頂点から、引きずりおろされた時……我々に、大義名分もなくなるのだよ」

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