天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
第8話 口付
それは……その人にとっては、単なるいたずら心だったのだろう。
誰もいなくなった時、小さなあなたは、僕を見上げながら、キスをした。
それも二度も…。
「あなたには…恋人がいるでしょ…」
二度目を拒もうとした僕に、あなたは微笑みながら、首を横に振った。
「今は、関係ない…トモなら…いいよ」
僕の首に、手を回し、
爪先で背伸びしていて、僕に唇を押しつけた。
その癖、堪らなくなった僕が、抱きしめようとしたら、あなたは、すぐに……僕から、すり抜け、
恋人の待つ家に走っていった。
唇に触れながら、僕はあなたを見送った。
あなたの遠ざかる背中だけが、僕の視界に残り、
消えることはなかった。
次の日。
ごめんね……。
のメールだけを残し、
彼女とは、会うことがなかった。
後で知ったが、彼女はその日…籍を入れたのだ。
つまり、結婚。
マリッジブルー……そんな言葉を知ったのは、何ヵ月もたった後だ。
次のキスは……本気で、僕からのはず…だった。
もう最初のキスから…あの人は、僕のものではなかったのだ。
キス…キッス…kiss…接吻…口付け……。
虚しい言葉だけの羅列。
あの人は……キスではなく、傷だった。
僕に傷を残し、あの人も傷を追っていた。
数ヶ月後、
あの人の残した傷が、消えないことに気付いた時、
僕はあの人と、再会した。
「トモ…」
一人暮らしを始めた僕の家の前で、彼女の泣き顔を見た時、
傷なんて消えた。
切なさと愛しさ……。
僕は、彼女を部屋に入れた。
例え…彼女の手が血まみれであっても……。
誰もいなくなった時、小さなあなたは、僕を見上げながら、キスをした。
それも二度も…。
「あなたには…恋人がいるでしょ…」
二度目を拒もうとした僕に、あなたは微笑みながら、首を横に振った。
「今は、関係ない…トモなら…いいよ」
僕の首に、手を回し、
爪先で背伸びしていて、僕に唇を押しつけた。
その癖、堪らなくなった僕が、抱きしめようとしたら、あなたは、すぐに……僕から、すり抜け、
恋人の待つ家に走っていった。
唇に触れながら、僕はあなたを見送った。
あなたの遠ざかる背中だけが、僕の視界に残り、
消えることはなかった。
次の日。
ごめんね……。
のメールだけを残し、
彼女とは、会うことがなかった。
後で知ったが、彼女はその日…籍を入れたのだ。
つまり、結婚。
マリッジブルー……そんな言葉を知ったのは、何ヵ月もたった後だ。
次のキスは……本気で、僕からのはず…だった。
もう最初のキスから…あの人は、僕のものではなかったのだ。
キス…キッス…kiss…接吻…口付け……。
虚しい言葉だけの羅列。
あの人は……キスではなく、傷だった。
僕に傷を残し、あの人も傷を追っていた。
数ヶ月後、
あの人の残した傷が、消えないことに気付いた時、
僕はあの人と、再会した。
「トモ…」
一人暮らしを始めた僕の家の前で、彼女の泣き顔を見た時、
傷なんて消えた。
切なさと愛しさ……。
僕は、彼女を部屋に入れた。
例え…彼女の手が血まみれであっても……。