天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「お前は………」

血だまりの中、愛しそうに首を抱いた女を、

僕は見つめていた。

「赤星……こいつは…」

ピアスから、アルテミアが言葉を発した。

「食ったのか……」

アルテミアの言葉に、僕は女から顔を背けた。


「お腹がすくの…あたし、もの凄く……」

血だまりの中で蹲っている女の手から、携帯が落ちた。

携帯が、何度も鳴る。

女は無視し、僕を見上げ、

「ともが……ね。あたしにこう言ったの…」





部屋に上がった女から、事情をきいた智也は、頷いた。

「由貴さん……。僕を差し上げます。だけど…」

化け物に変わった由貴。

だけど、ともから切なさも、愛しさも消えなかった。

「僕にずっと…」






「……トモは言ってくれたの。自分を食べてもいい…。だけど……ずっと僕に口付けをして下さいと……」

由貴は、泣いていた。

「男はみんな…あたしを裏切って…あたしから、離れていった。トモだけ!トモが、ずっといてほしいって…」

由貴は、トモの首を抱きしめ、口付けをした。何度も何度も……。

「だけど……もう駄目…お腹で減って…我慢できない!トモの…トモの顔も…食べちゃいそうなの!!!」

由貴は、絶叫した。

そして、僕を見ると、

「だから……トモを食べる前に…あたしを殺して…お願い…」

由貴の目から、涙が流れた。

それは、最後の人として…女としての涙だった。


「く」

僕は、目をつぶった。

2つの物体が飛んで来て、

合体すると、剣になった。

「くそ!」

僕は、目をつぶりながら、剣を振り下ろした。



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