天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
舞子の体は、溶けていく。

溶け終わる瞬間、まだ舞子の顔が、原型を留めているとき、

舞子は言った。

「最後…お前に言っておくことがある……テラは、二人いる」


「テラが二人?」

何も話せない僕に、代わって、アルテミアがきいた。

「それも……二人とも………お前は知っている……」

舞子はフッと笑い、

「それに……お前達は、いずれ……お前達の……矛盾に気付く……クラークが気付いたように…」

舞子の体が、溶けていく。

口が消え始めた。


「だけど……お前なら……克服……で、き、る…赤星こ………………………………………」



それが、最後の言葉だった。


クール過ぎる女……

守口舞子。



彼女は、他の仲間と違い…異世界ではなく、

自分の生まれた世界で、命を落とした。

しかし、彼女の願いは、

こうだろう。

愛する者が死んだ…世界で死にたかったと…。



それは、僕も同じだから。

僕…赤星浩一もまた、愛する女がいる世界を、選んだのだから。


舞子が、この世界に戻ってきた目的は、一体何だったのだろうか。


それは、永遠にわからない。

僕を殺す為だと思っていた。

だけど、それは違うみたいだ。

シャイニングソードを見つめながら、僕はただ立ちすくむ。

「赤星…」

アルテミアは、言葉では説明できなかったが、

なんとなくわかったような気がしていた。

愛する者を失い…彼の願いも叶えてやれなかった…女。



アルテミアはしばらく…赤星に声をかけるのを止めた。
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