天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
第10話 斬刀
「信用できるのか?」

美奈子の言葉に、力強く頷いた明菜の瞳の強さに、

もうこれ以上きくことは、できない。

「一応…信用しょう」

美奈子は、神野に右手を差し出した。

「ありがとう…」

神野は、美奈子の手を握り返そうとして、差し出した右手に気付き、躊躇った。

「握り潰すことをしなければ…大丈夫だ」

美奈子は微笑んだ。

神野も表情を和ませ、美奈子の握手にこたえた。

固く握る手。

手袋をしてるからではなく、握手だけで、手の固さと異様な太さを感じることができた。

(人の手ではないか…)

美奈子は、笑顔のまま握手を解くと、明菜の方を向いた。

「この人の腕のことは、わかった。しかし、腕を付けなければ、明菜の中にある剣を使えないなんて…本当か?」

化け物の腕を、移植しなければ使えない。

美奈子は、そこに引っ掛かりを感じていた。

「あたしも…そう思ったんですけど…」

明菜は、自分のお腹の辺りを確かめた。

「それは、簡単なことです」

神野は、自分の左手を明菜にかざした。

しかし、何の変化もない。

「失礼」

今度は、右手をかざした。

すると、剣の柄が、空間に穴を開けて現れた。

それを、神野は一気に引き抜く。

次元刀が、出現した。

「な!」

明菜の体から、引き抜かれた剣を見て、美奈子は絶句した。

神野は、刃を反転させ、柄を美奈子に差し出した。

美奈子は恐る恐る…次元刀を手に取った。

「抜いてしまえば…誰でも持てます」


「軽い…」

美奈子は、次元刀の軽さに驚愕した。へたしたら、携帯電話の方が重い。

「明菜さんという鞘から、剣を抜くのに……この手が、必要なんでしょう」

美奈子は、次元刀を神野に返した。

「もっとも、異世界の人間は、明菜さん自体を剣にしていたようですが…俺に、そんな技術はありません」

明菜の能力をもとにして、次元刀をつくったのは、クラークだった。

その違いが、剣の威力に関係あるのかは…神野達には、わからなかった。


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