天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「……まあ、そんな話も何なのですが…」

神野は罰が悪そうに、剣を一振りすると、

周りを見回した。

「…ここなのか?」

美奈子も、周りを警戒した。

「ええ…そのはずなんだが…」


神野と美奈子…明菜がいる場所は、沙知絵が働いていた研究所兼…病院だったはずだ。

だが、ここにあるはずだが…何もない。

廃墟すらない。

ただの草むらが、目の前に広がっているはずだ。

神野は土を堀り、痕跡を探すが…何もない。

「壊したとかのレベルじゃない…。何も残っていない…」

神野は、コンクリートや建物の破片を探すが、それすらない。

「警察側の建物だったというけど……舞子が関わっていたと考えると…完全に、こっち側の建物というわけじゃないね…」

美奈子は、周囲を見回し、考え込んだ。

民家や住宅地からは、離れていたが…

あまりにも、おかしい広大な平地が、広がっている。

それに、雑草の生えた方が…揃い過ぎている。

(何か…あった…な)

美奈子は、確信した。

だけど…それを証明するものはない。

(だが…)

美奈子が、確かめたいのは、病院があったかではない。

「消したということは…知られたくないからだ…」

美奈子は、頷き、

「それだけわかればいい…。もう用はないわ」

病院跡から、立ち去ろうとする美奈子と神野と違い、

明菜は、その場所から動かなかった。

地面を見つめ、動かない明菜に、美奈子は近づく。

「どうした、明菜?」

美奈子が、駆け寄ると、

明菜は泣いていた。

泣いていたというより、涙だけが、頬を流れていた。

「ここの下から…声が聞こえる…苦しそうな声…」

美奈子もまたを見、耳をすましたが…何も聞こえない。

神野も聞こえないらしく、

「掘り起こしましょうか?」

次元刀を下に向けた。

突き刺そうとした時、

「やめよう!」

美奈子が止めた。

驚く神野に、美奈子は首を横に振った。

「思念は…消える…。無理に掘り起こさない方がいいわ」



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