天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「それが!この世界の混乱を、招いている」

沙知絵は、扉の前まで来た。

「彼は、いずれ向こうの世界に帰る!」

襲いかかろうとするカップルを、マスターは目で止めた。

「そうかもしれない!だけど…あんたのテラは、それを許さない!」

沙知絵は、ドアを開け、マスターに微笑みかけ、

「だけど…それは、あんたが蒔いた種よ」

沙知絵は、左手を振りながら、外に出た。



「なぜ追わないのですか!」

カップルの男の方が、マスターにきいた。

普段の姿に戻ったマスターは、フッと笑い、

「あの女も…また、今回の因果律の中に、組み込まれている。我々が、殺せば…因果が変わる」

「因果が変わる?」


また扉が開き、お客が入ってきた。

「いらっしゃいませ」

マスターは、営業スマイルを浮かべ、頭を下げた。

カップルも席に座った。


「ここは……?」

店内を、キョロキョロ見回すお客に、マスターは話しかけた。

「初めてのお客様ですね。さあ、どうぞ!カウンターの方へ」

戸惑いながらも、カウンターに座るお客に、

マスターは、最初のコーヒーを置いた。

「基本的に…当店はコーヒーしかおいておりません。それも、一種類だけ…。その一種類とは…」

いつものトークを始めるマスターに、お客は頷き、コーヒーを飲む。

「お客様…。当店は、どのようにして知られましたか?」

マスターの笑顔に、

「あ、ああ…」

お客は、ポケットを探り、

「何か…これに書いてあったような…」

お客は取出したものを確認したが、何も書いていない。

「結構ですよ。このカードを提示された方には、無料でコーヒーを、提供させて頂きます」

カード…。それは、美奈子が持っていたものと同じだった。

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