天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「だから……俺達が、何をしたというんだ」

カップルを囲む集団に、女を庇いながら、男は叫んだ。

「何もしてないよ〜なあ」

「だから〜何なのよ」 

暴力は、理不尽に起こる。

詰め寄る集団に、男は怯み、後ろにいた女が携帯をかけようとした。

「何してんだよ」

集団の1人が、女の手を取り、携帯を奪い取ろうとした時、

囲んでいた集団に穴が、できた。意識も、女に向いていた。

その隙を、男は見逃がさなかった。

隙間に体当たりして、男は逃げた。

「てめえ!」

見捨てた男の行動に気付き、何人かが男を追った。

「達也さん!」

女の悲痛な叫びも、男には関係ない。

ダッシュで逃げようとしたが、誰かにぶつかった。

達也は、コンクリートにでも、ぶつかったかのように、尻餅をついた。

「あら?」

達也がぶつかったのは、華奢な女だった。

赤いワンピースを着た女。

「邪魔よ」

ワンピースの女は、男を無視して、歩きだす。

達也を追い掛けてきた三人の若い男は、女に気付いた。

「また女だ!」

「いいねえ」

ターゲットをワンピースの女に変え、近づこうとした瞬間、

三人の男は、消滅した。

辺りに焦げ臭い匂いだけが、残っていた。

ワンピースの女は、歩く速度を変えず、平然と歩いていく。

目の前で、男達に殴られ、着ていた服も、引き裂かれていく女が、目に入ったが…ワンピースの女は、気にしない。

真っ直ぐに、近づいてくるワンピースの女に、

「何か用か!」

1人の坊主の男が、凄んでくる。みんな…十代の男だ。

凄んだ少年の体が、突然燃え出し、すぐに消滅した。

「邪魔よ」

少年達は、底知れぬ恐怖と、異様な雰囲気に気付いたが、

もうその時は、最後だった。

そう感じた時には、燃えていた。

ワンピースの女は、リンネだった。


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