天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「え?」

拍子抜けするアルテミアをほったらかしにして、沙耶の友達は、アルテミアの前を横切り、橋の端に向かう。

「ち、ちょっと!」

アルテミアは慌てて、友達の後を追った。

すると、ノロノロ動いていた車が、アルテミアが急に逆に歩きだした為、

思わず、顔を後ろにやった運転手の不注意で、軽く衝突する車が、何台か発生した。

橋の上は、大渋滞になってしまった。

「ちょっと!どこいくんだ!1人で、行くな!」

アルテミアの制止を無視して、沙耶の友達は、橋を右に曲がると、すぐそばにある階段をかけ降りていく。

「チッ」

アルテミアは、舌打ちすると、橋を渡るのを止め、コンクリートの手摺りに手をかけると、そのまま下まで、飛び降りた。

約十メートル。友達より速く、川の横に着地した。

川は、雨などを考えてか、段になっており、川の水に触れるには、さらに、二メートル下へ飛ばなければならない。

階段は、段の上までしかなく、コンクリートで整備された道というか…通路しかない。

歩けるが、歩くようにはなっていない。

事実、階段は、橋の横にしかない。多分、整備用か何かだろう。

川辺まで、垂直の壁になっている為、子供が遊んでいる形跡もない。

(下には、降りれないな…だけど…何て、危ない場所なんだ)

僕はピアスの中から、周りを確認した。


アルテミアも周りを一瞬で見極めると、コンクリートの道を歩き、橋の真下に行こうとした。

橋の下は、結構薄暗い。

さっきまで、明るかったのに、いきなり日が落ちた。

「あんた!大丈夫なの!」

階段をかけ降りた友達が、アルテミアに近づく。

「来るな!」

アルテミアは、叫んだ。声が鋭い。

今度は、足を止めた友達の方を振り返らずに、アルテミアは橋の下を睨んだ。

暗いはずの橋の下が、眩しく輝き出した。

沈む夕陽が、ちょうど橋の下…川の真っ直ぐ向こうに見えた。

「黄昏か…」

僕が思わず、呟いた時、

オレンジの光の屈折の中、人影が揺らめいた。

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