天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「僕は…もうこの世界を捨てた!この世界が、壊れたとしても……アルテミアの方が大切…」
「馬鹿野郎が!」

僕の言葉が言い終わる前に、アルテミアが怒鳴った。

「てめえ!赤星!あたしを、そんなに弱いと思ってるのか!」

アルテミアの声は、怒りで震えていた。

「あたしは、弱いのか!てめえに心配されるくらいに!それにな!大切って、言葉で、あたしが喜ぶとでも思ったのか!」

「アルテミア…」

「今、てめえが言った大切は…お荷物と同じだろうが!」

アルテミアの怒りは、頂点に達する。

「あたしの体があったら…思い切り、ぶん殴ってやるのに!」

アルテミアと体を共有する僕には、彼女の怒りともどかしさが、直接感じられた。



アルテミアは…これ以上何も言わなかった。

僕への怒りだけではなく、自分自身の腑甲斐なさにも、憤りを感じていたからだ。

うなだれる僕と、何も言わないアルテミアとの…無言の時が、少し続いた。



「見つけたぞ!」

突然、頭上から声がした。

僕ははっとし、頭上を見上げた。

いつのまにか、数十体の魔物が、浮かんでいた。

「やはり…お前達に傷の1つでもつけないと、我が世界に戻れぬわ」

「我らの情報網を、舐めるなよ!」

「アルテミアは、本領を発揮できない!」

顔に翼が生えたような魔物が、三匹。

後は、空中から、僕を囲むように、屋上に着地した。

洋々な姿をした異形の者を見て、頭をうなだれると、僕は口元を緩めた。

(こいつらの方が…落ち着くとは…)

「震えているのか?」

一匹の魔物が、僕に近づき、あざけるように言った。

「仕方がないか…たかが、女神の依り代。単なる人間だ」

近づく魔物は、巨大な口を開け、

「女神ごと食ってやろうか!」

楽しそうに、笑いながら言った。


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