天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「そうか…」

僕は、顔をあげ…髪をかきあげると、大笑いした。

狂ったように笑う僕を見て、口を開けた魔物も釣られて笑った。

「ハハハハ!こいつ…気でも狂ったのか!」

笑いながら、後ろの魔物や、真上でホバーリングしている魔物達の方を見た。



「え?」

しかし、笑っているのは、その魔物だけだった。

他の魔物は震え…冷や汗を流していた。

「どうした?ジル」

そばにいた蜂の体と、鍬形の角のような腕をした魔物の顔は、真っ青だ。

「やはり…無理だったのよ…あたしらくらいでは…」

「ジル?」

ジルの恐れに、首を傾げた魔物に、空中にいる翼を持った魔物がこたえた。

「ベッカ…お主は、ここに送り込まれて、日が長い……知らぬのは、無理がない…」

「え?何を…」

ベッカには、理解できない。

「ヒイイイ…」 

ジルが悲鳴を上げた。

ベッカの肩越しに、にやりと笑い…赤き瞳を光らせた僕がいた。

「たかが…依り代だろ…」

と、ベッカが言った瞬間、彼の体は干からび……砂となった。

僕はベッカの背中に、人差し指を突き刺すと…

ベッカの血と…命を吸い取ったのだ。

人差し指を突き出したまま、ジルと対峙し、

僕は微笑みながら、言った。

「頂きます」

満面の笑顔を向けたが…赤き瞳は笑っていなかった。

「ヒイイイ!」

もう逃げることはできない。

魔物達は一斉に、僕に襲い掛かってきた。

「赤の王!」

翼を畳み、急降下してくる空にいた魔物達。




数秒後、すべての魔物は、僕に吸い取られていた。

この世界に来てから、あまり血や…命を吸ってなかった。

久しぶりの…バンパイアとしての食事に、

僕は、身を震わせた。



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