天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「今度は…あたし達が付き合ってみましょうよ。粟飯原にふられたあたしが…あなたに、慰めてもらって、付き合うようになった」

奥野はそう言うと、考え込み、

「それよりも……もっと松田をけしかけた方が、いいかしら?あの男なら、あたしの思い通りに、動いてくれるわ」


この場で方膝をついた僕の耳もとで、奥野は顔を近付け、囁いた。

「どっちがいい?」

軽く耳に息を吹き掛けた。

「くそ…」

意識が飛びそうになる。

(媚薬だ……)

僕は、唇を噛めしめた。

「無駄よ…あたしの魔力から、逃れられる男はいない…最後は、みんな…欲望をさらして…あたしの虜になる」



「何が……目的だ?」

何とか意識を保ちながら、僕は奥野を見た。

目が合うだけで、また頭がおかしくなってきた。


「目的?目的なんて、ないわ。粟飯原も、いずれはあたしのものにするわ」

そう言ってから、奥野は僕から顔を離すと、考え込んだ。


「強いて言うなら……愛ね。人間の言う愛…」

奥野はまた微笑む。

「交尾とは…違う愛。だけど……みんな苦しそう!結局、愛は欲望と一瞬よ」

「ち、違う!」

「何言ってるの?こんなに、興奮しちゃってる癖に!説得力がないわよ!ただ欲望を、入れたいだけでしょ」

「お、お前には、わからない」

「なにが?」

僕の下半身に、触れようとした手を払い退けると、

「愛は、お互いの気持ちだ!理解しょうとしない…お前にわかるものか!」

僕は、ふらつきながらも、立ち上がり、

左手を突き出した。

「モード・チェンジ!」

僕の精一杯の叫び声に、呼応して……左手の指輪から光が溢れだし、僕を包んだ。


そして、光を切り裂いて出てきた者に、奥野は絶句した。

「アルテミア…」


その数秒後、奥野の最後の断末魔がこだました。





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