天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「な…」

唖然とする僕の目に、せせら笑う男の顔が映った。

「女神には、死を!赤星浩一…あなたには、絶望と苦しみを、さらに…与えて差し上げよう」

レーザーを撃ったのは、山根だった。

両手を広げた山根の後ろに控える集団も、一斉に左手を突き出した。

「撃て」

山根の冷静な命令に、僕に向かって、レーザーを撃った。


しかし、

レーザー光線は、虚しく空を切った。

「な!」

唖然とする山根達の後ろに、僕が立った。

「お前達は…」

赤く光る僕の瞳が、黒いコートの集団を射ぬく。

「チッ!」

舌打ちした山根が、振り返った時、

「何者だ?」

耳元で僕の声を聞き、山根は冷や汗が、全身を駆け抜ける感覚を覚えた。

その場から飛んで離れ、

黒いコートの集団は固まらずに、散り散りに距離を取った。

僕は頭の中で、彼らのすべての動きを追尾できた。

(殺せる!)

そう確信した瞬間、僕は手に…シャイニングソードを持ち、一振りで切り裂こうとした。

「や、やめて下さい!!」

どこか切羽詰まった…切実な声が、僕の耳に飛び込んできた。

散開した集団の中で、1人だけ…その場から動かない者がいた。

小さく…か弱い生物。



僕の動きが、止まった。


僕の眼下にいるのは…人間だった。

紛れもなく…小さくか弱い人間……。そして、僕を恐れながら…涙を目に貯めながら、必死に、懇願する…人間。

(ひ…人が…いる)

動きが止まった僕に向かって、

四方から、レーザー光線が放たれた。

僕の足…腕…頬…そして、腹を…貫通した。



血を吹き出し、倒れる僕を見て、

山根が笑った。

「撃ち続けろ!」

悪魔のような形相の山根と……撃たれて、血を吹き出す僕を見て、悲しげな表情を浮かべ、

「やめろ!」

と絶叫する人を見て、


僕は笑った。


(どちらも……人か……)


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