天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
切り裂こうとした僕の目の前に、無防備な仁志が飛び込んでくる。

そのまま…切り裂き、仁志ごと殺すことができたら…未来は変わったかもしれないが……

そうしなかったからこそ、よかったのかもしれないが…。

仁志を見、剣を止めた僕…と、冷静なアルテミア。

「モード・チェンジ!」

突然溢れた…まばゆい光に、仁志が目をつぶった。



そして、目を開けた時、


仁志の目の前に立つ…女神。

ブロンドの髪をなびかせ、大きな瞳は、周囲の敵を射ぬく。

見た目の美しさに、その中にある鋭い闘志。

アルテミアが、一歩前に出ただけで、仁志は慌てて、道を開けた。

「うわあ…」

感嘆ともとれる声をもらし、仁志は通り過ぎるアルテミアの横顔に、見惚れた。


「天空の女神…」

一瞬、動きを止めてしまった山根達は、自らを奮い立たす為に、唇を噛み締めた。

「く!」

血が、出るほど噛み締めた唇を拭うこともせず、山根は五人に向かって、檄を飛ばす。

「恐れるな!やつは、長時間、活動できない!」

山根達は頷き合うと、手をアルテミアに向けた。


「モード・チェンジ…」

つぶやくように言ったアルテミアの姿が、人々の視界から消えたのと、

山根達に付けられた義手が、切り取られたのは…同時だった。

切り取られたのに気付いたのは、痛みよりも、

消えたアルテミアが、もとの場所な立ち…五つの義手を、重ねて持っていたからだ。

「な…」

絶句する山根に、アルテミアは微笑みかけた。

「まだやる?」


その余裕の表情に、山根のそばにいた女が、キレた。

女は、アルテミアに襲いかかろうとした。



「やめろ!」

山根が制した。

「我々は…一度完全変化したら…この姿には、戻れない」

山根は、女を見、

「まだ…人の姿で、やらねばならぬこともある」

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