天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「え?あっ!ええ!」

目を丸くしながら、驚き…この興奮する茶髪の男に、眼窩の男は、さらに札束をちらつかせた。

「お望みならば…さらに、差し上げますが?」

「ま…」

美奈子は止めようとしたが、眼窩の男の背中から、漂う殺気が、美奈子の自由を奪った。

「えっ!ああ…今は、これでいいよ!えっ!マジかよ」

茶髪の男は、興奮し続け、携帯を取り出すと、

友達に電話しだした。

「今さ!気前のいいおっさんから、金貰ったんだ!う、うそじゃないぜ!まじ、まじ〜まじだよね?」

茶髪の男は、眼窩の男に確認した。

眼窩の男は、口元に笑みを浮かべながら、頷いた。

「やっぱ!まじだよ!」

茶髪の興奮は、止まらない。

「お前も、来いよ!」

眼窩の男に、背を向けて、携帯で話し続ける茶髪の男に向けて、眼窩の男は、軽く頭を下げると、

来ていた背広の内ポケットから、銀色の物体を取り出した。

それは、一円玉だった。

眼窩の男は、一円玉を茶髪の男の足元に、投げた。

「これで…百万と一円……。あなたの価値を越えた」

眼窩の男の口から、鋭いものが、飛び出した。

それは、舌だった。

鋭利に尖り、固く硬直した舌は、茶髪の男の首を、胴体から切り裂いた。

地面に転がる頭と、

切り口から、血が噴水のように、吹き出した。

転がった頭は、目をぱちぱちさせ、口が動いていたが、声にはならなかった。



どうしょうもなく、惨劇を見守ってしまった美奈子は、声にならない悲鳴を上げた。

血飛沫が上がる中、転がった頭を蹴り上げると、眼窩の男は、再びATMから、お金を引き出す。

「私は…お金が有り余っておりまして…。私が死ぬまでには、使いきれない」

眼窩の男は、何度もお金を引き出し、

「そんな…私も、人は買えない……と思っておりましたが…」

眼窩の男は、札束を掲げ、

「最近…買えるらしいんですよ…。まあ、人によりますが…」


にやりと笑う眼窩の男の姿に、

美奈子の何かが外れた。


「ふざけるな!」

美奈子は、呪縛を解き放ち、一歩前に出た。
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