天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「め…め」

舌を切られ、田川はもう言葉を発することが、できない。

神野は最後にとどめと、頭を突き刺した。

次元刀を抜くと、ATMに設置されているはずの防犯カメラを探した。

扉の真上の角に設置されているカメラを見つめたが、

鮮血で赤くなっていた。

「大丈夫か…」

今の戦いをカメラに残したくは、なかった。

一応、カメラを破壊しょうとした時、

遠くの方から、パトカーのサイレンが近づいてくるのが、わかった。

「神野さん!」

明菜の叫びに、神野は舌打ちすると、田川の死体を置いて逃げることにした。


突き破ったガラスから、外に出ようとしたが、

神野は、美奈子の様子のおかしさに気付いた。

田川を見下ろしながら、その場を動かない美奈子の腕をとると、

強引に外へと出す。


田川の死体を見られるより、自分達のことを知られる方が、都合が悪かった。


美奈子の体は軽く…引き寄せると、よろめきながら、歩きだした。




(おのれ〜)

死んだと思われた田川は、真っ二つに切られても、まだ完全に、死んでいなかった。心の中で、毒づきながら、

(我々の証拠を残すわけには、いきません)

パトカーが、ガラスが割られたATMの前に、止まった。

警官が車を降り、近づいてくる。

(我々の未来の為に!)

田川はもう声にならなかったが、心で叫んだ。

田川は、口を開けると、明らかに奥歯が、歯ではなかった。

それは、爆弾だった。

普段の会話ぐらいなら、起爆スィッチが、作動しないが、

数秒噛み締めると、

起爆スィッチが、作動した。


田川から爆発した…爆弾は。

自決用でもあり、最後の切り札でもあった。

ATMの建物と、警官…そして、パトカーが中に浮かんだ程の爆風が、半径数十メートルを吹き飛ばした。

吹っ飛んだ機械から、お金が飛び出したが、

爆風で、燃え…灰になっていった。


< 180 / 227 >

この作品をシェア

pagetop