天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
爆発は、予想外に凄まじく、ATMから半径十メートル程をすべて、吹き飛ばしていた。

偶々そばにいた数人の人々は、その爆発の犠牲となっていた。

田川が発動した爆弾は、ただ田川の原形を止めないだけでなく、爆発とともに、まるで散弾銃のように、周囲に飛び散り、

あらゆるものを貫通していた。

それは、通行人の体であり、近くにあった電柱にも、突き刺さっていた。

後でわかることだが、その飛び散ったものは、人の骨や歯と同じ成分で、できていた。

現場に近づいてくる消防車やパトカーのサイレンと、泣き叫ぶ人々の悲鳴で辺りは、騒然となっていた。

火災は思ったより、少ないが…足を貫通した人や、血を流して、横たわる人々の姿に、人々の悲鳴が、パニック状態に陥っていた。

少し遅れて到着した数台の救急車から、隊員が飛び出し、怪我人達に、駆け寄っていく。

肩や太ももから、血を流す学生や、助けを求めて、泣き叫ぶ老婆に、

その様子を冷ややかに、眺めていた女は、嫌悪感を露にした。

ショートカットの女は、怪我人の中、1人たたずんでいた。

「君は、大丈夫か!」

女にも、救急隊員が駆け寄ってきた。

女は、笑顔を見せ、

「あたしは、大丈夫です!他の方を…」


女の言葉に、隊員は頷き、

「そうか!よかった…」

他の怪我人のもとへ、向こう。

「助けて!助けて!足が」

隊員にすがりつく老婆を尻目に、女は現場に背を向けた。


「…現段階では、自殺…もしくは、自殺テロの両方の可能性が高いと…」

いつのまにか、嗅ぎつけたレポーターが、人を助けるよりも、カメラに向かってわめき散らしていた。

上空では、マスコミのヘリコプターが、飛んでいた。

「フン」

女は鼻を鳴らした。

歩く女の後ろで、縄が張られた。


すると、女の携帯が唐突に鳴った。

「はい…」

おもむろに、携帯に出た女の耳に乾いた声が、聞こえてきた。

「申し訳ありません…。田川が出すぎたまねを…」
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