天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
あの日……宮島勝は、死んだはずだった。

遺書も書いて、学校の屋上から、飛び降りたはずだった。



塀をこえ、飛び降りた時…覚えているのは…近づく地面と、激しい音だけだった。

過去のオーバーラップも、何もなかった。

夜の学校に忍び込み、屋上までいく途中の方が、気持ち悪かった。


人型にへこんだコンクリートの地面から、立ち上がると、

血が出ていない自分と…肌の色が、おかしいことに気付いた。

いや、色より固さが気になった。

弾力はあるが、あきらかに…今までよりは、固い。

顔を確認しようと、手で触ったとき、鼻が飛び降りる前より、高い。 

(フゥ)

しばらく…どうしたものかとその場で、胡坐をかくと、考え込んだ。

ちらっと上を見上げたが、屋上は三階だ。地面のコンクリートまで、遮るものもない。

5分程考えた後、宮島は立ち上がった。


考えても、仕方のないことだった。


結果として、宮島は死ねなかったのだ。

仕方なく、宮島は立ち上がると、もう一度屋上へと、向かった。

途中、非常灯に照らされた窓ガラスで、顔を確認したが……

見慣れた自分の顔しか、映らない。

少し安堵した自分が、嫌だが、

決意を新たに、屋上へと階段を上った。



だけど…人は一度、冷静になると……冷静に冷めてしまうものだ。

再び飛び降りる前に、風に飛ばされないように、靴で止めていた遺書が気になり、

宮島は、遺書を呼んだ。



数分後、宮島は大笑いした。

内容は、いじめの告発だった。

自分をいじめていた相手の名前が、書いていた。


「こんなもの…公開されるかよ!」

だけど、どうしたらよかったのか。

相手の親にも送ったり、ネットに書き込んだり、警察も送り付けたら、よかったのか。



どれも、効果があるものか。

自分が死んでも、効果なんてあるはずがない。

宮島は、遺書を握り潰した。
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