天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
体育館に向かう宮島。

一歩一歩…地面を踏みしめる度に、

宮島の体から、力が溢れて来るのが、わかった。

目が一瞬、ぐるぐる回ったような目眩を感じたけど、すぐに安定した。

さらに、視界が広がり、視力が上がったように思えた。

体育館の扉が、やけに小さく感じ、ノブを回した瞬間、ぐしゃと潰れてしまった。

普段は、簡単にくぐれる入り口が、屈まないと入れない。



体育館に、宮島が入った途端、ステージに上がってマイクの前にいた校長は、目を点にして、挨拶を止めた。

何度も、目をこすり、確認する。




「ウオオオ!」

なぜか、宮島の口から雄叫びが発声られた。

自分でも、わからなかったが、興奮していた。

多くの人間に。

(あいつらは、どこだ?)

自分をいじめていた相手を探そうと…思った。

それから、宮島には記憶がなかった。

意識を取り戻したのは、数分後だ。




「ヒイイ」

声にならない悲鳴を上げて、尻餅をついた校長の様子に気付き、

全校生徒が、振り返った時、入り口の前にいたのは、5メートルを越す大男だった。

それも、一つ目の化け物。

生徒がパニックになるのは、数秒かかった。

あまりにも信じられないものを見ると、人は頭で考えてしまう。

その思考の遅れが、逃げるタイミングを逸した。

ひとっ飛びで、生徒達の列の真ん中に、降り立った化け物は、力任せに両拳を振り回し、

数人の生徒の頭蓋骨を粉砕した。



「うわあああ!」

一人の男子生徒の悲鳴が、スイッチとなった。

化け物から逃げ惑う生徒。

化け物は、真っ先に逃げる者を標的にした。

体育館の側面にある扉を、一番最初に掴んだ生徒は、後ろから飛び蹴りをくらい、背骨が折れた。

「きゃああ!」

女生徒の悲鳴が、虚しく響き、圧倒的な力による殺戮は、続いた。
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