天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「あっ」

数分後、意識を取り戻した宮島は、

周りに転がる死体を見ても、別段…驚くことはなかった。

手に、担任の生首を持っていてもだ。

記憶がなくても、自分がやった確信はあった。

生臭い血の匂いも、別に気にならなかった。

死体は、体育館だけではなかった。

グランドや近くの校舎の廊下にも、死体は転がっていた。

そのほとんどが、力任せに引き契られていた。 

宮島は、担任の生首を投げ捨てた。

無残な死体を見ても、宮島には何の恐怖も、感情も、感慨もわかなかった。まして、後悔などするはずがなかった。


(だけど)

肝心の宮島をいじめていた生徒が、見つからない。

三人いたはずだ。

「チッ」

軽く舌打ちすると、宮島は一人一人をまるで物のように、蹴ながら探していく。

十人目でやっと、一人見つけた。

首が回転しており、絶命している一人目の顔を、宮島は何度も踏みつけた。

それを二人目…三人目と続けていく。

三人目を思いっきり、踏み付けていると、

そばで動く者が、目に入った。

それは、死体に隠れるように、床に顔をつけ、耳を塞いで、震えていた。

二人は、死体に隠れているのではなかった。

その場で、腰を抜かしたのだ。

それから、彼らは殺戮が終わるまで、ただ怯えていたのだ。

「新田くんに…遠山くん?」

宮島の呟くような声が、静寂が支配するようになった体育館に、響いた。

その声に、新田が顔を上げた。

「や、やっぱり…み、み、宮島くん……なの…?」

顔を上げた新田と、宮島の視線が合う。

宮島は、二人を知っていた。

同じいじめられる側の人間だった。

(だから…殺さなかったのか?)

宮島は、自分自身に嫌悪感を覚えた。




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