天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
ガタガタと震えている新田と遠山は、顔を上げ…周りの惨劇に、また声にならない悲鳴を上げると、

頭を抱えて、また床に顔をつけ、怯えだした。

「ば、化け物が…」

震えてながらも、口を動かす新田。

遠山は、何とか顔を上げ、宮島を見上げた。

「み、宮島くんは……大丈夫だったの?ば、ば…化け物は?」

遠山の言葉に、宮島は自分の体の変化に気付いた。

(暴れている時は…俺とは、わからないのか?)

小動物のように、床の上で丸くなっている二人を見ていると、宮島は妙な切なさを感じていた。

(これが…昨日までの俺…)

あまりにも弱く…脆く見えるものを…守るか…それとも、いじめるかは…人によって、違う。

だけど、宮島はいじめていた三人の行動が、少し理解できた。

しかし、だからといって、三人を肯定することはない。

(三人は、殺してもよかったけど…)

宮島は、拳を握り締めた。

(弱いままでは、いけない)

宮島の全身から発せられた気に、新田と遠山は本能的にびくっと、体を震わせた。



その時、宮島の後ろから拍手が聞こえてきた。

宮島が、振り返ろうとすると、四方から拍手が起こった。

「素晴らしい!」

そう言いながら、宮島に近づいてくるのは、全身黒ずくめの男。

さらに、囲むように、四人の黒ずくめの男女が、体育館の上から、飛び降りると、宮島に向かって拍手をし出す。

「君のこの行動!この強さ!」

後ろから近づいてきた男は拍手を止め、両手を広げた。

残りの四人は、拍手を強める。

「これほど…殺したのに、君の心に、ブレはない!そう!」

男は、黒のサングラスをしていた。片手で、サングラスを外すと、裸眼で宮島を見つめた後、

深々と頭を下げた。

「あなたは、目覚められた!人から、進化したのです」

「進化?」

宮島の問いに、男は顔を上げた。

「あなたは、人という劣等生物では、なくなったのです」

黒ずくめの男は、山根だった。

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