天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
第17話 輪廻
「リンネ様」

ツインテールのアイリと、ポニーテールのユウリ。 

二人の魔物は、リンネの前に跪いた。

過疎化が進む…都会から離れた農村の廃校に、リンネはいた。

田んぼが広がる風景を、リンネは気に入っていた。

都会の空虚な建造物は、魔神であるリンネには、滑稽に見えた。

窓にたたずみ、誰もいないグラウンドを眺めていた。

アイリとユウリは、そんなリンネに頭を下げながら、言葉を続けた。

「例の者を連れて来ました」

「へえ〜」

跪くアイリとユウリの間を、ふてぶてしく腕を組ながら、沙知絵が教室の中に、入ってきた。

「あんたが、騎士団長?」

口元に笑みを浮かべながら、教室内を見回し、

「フン。その割りには、寂びれたところにいるじゃない?」

「貴様!」

ユウリが立ち上がった。

「リンネ様に、無礼であろう」

沙知絵は、ユウリを無視して、

「その気になれば…この世界の殆んどを、破壊できる程の…神の力を持つ者の考えを、知りたいだけよ」

沙知絵は笑みをやめ、窓にたたずむリンネを、軽く睨むように見た。

その気になれば、自分などすぐに殺せることを、沙知絵は理解していた。

だからこそ、怯えるではなく、強きの態度を取った。

それに、リンネが呼んだのだ。用がすむまで、自分を殺すことは、ないだろうと考えていた。

「貴様!」

襲い掛かろうとするユウリを、アイリが制した。

「やめろ!我々は、連れて来いと命じられだけだ!こやつを、殺せとは、命じられていない」

アイリの言葉に、沙知絵は鼻を鳴らし、

「で…あたしに、何の用なの?」

沙知絵はさらに、強気な態度を取った。

殺されるのは、わかっていた。だけど、その結果が待っていても、沙知絵は…魔神であるリンネを見たかった。

化け物となった自分でも、この世界を取れる程の力を感じなかった。せいぜい、数百人を始末できるくらいだ。

(神レベルの力とは…一体?)

学者であった自分の好奇心も、動いていた。

リンネは、そんな沙知絵の心を知ってか…グラウンドから、振り向いた瞳は、限りなく優しかった。
< 199 / 227 >

この作品をシェア

pagetop