天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「アルテミア…」

赤道近くから、一気にテレポートしたアルテミアは、都市部の中心から離れた工場地帯に、降り立った。

独特のオイルや金属の臭いに、アルテミアの具合は、一気に悪くなる。

すぐに、僕はアルテミアから変わった。

立ち並ぶプレハブ風の簡易工場に、活気はなかった。

不景気からなのか…殆んどの工場は、動いていないようだ。

僕は、気を探った。

明らかに、数人の人とは違う気配を感じた。

(前のやつらに…プラス1人…)

拭えない血の臭いがした。

バンパイアの本能が、わずかな臭いも逃さない。


「ククク…」

楽しそうな笑い声が、聞こえてきた。

工場の屋根に、七人の男女がいた。

唐突に、辺りの闇が濃くなってきた。まるで、闇を連れてきたかのように。

「ごきげんよう!赤の王よ」

山根達は、屋根から軽く飛び降りると、深々とお辞儀をした。

「お前達の目的は、何だ?人の進化と言ってるが…」

僕は、山根達に近づいていく。

「それは、嘘だろ?」


「いえいえ…我々は、嘘はつきませんよ」

肩を軽くすくめて見せた山根は、そのままの体勢で、固まった。

「な!」

山根だけでない。他の六人も、体が固まった。

「お前達のこと…すべて教えてもらう」

僕の目が赤く光り、彼らの体を緊張させ、動きを封じたのだ。


「さあ!話せ!」

僕が近づく度に、山根達の自由はなくなっていく。

山根の口が、勝手に動いていく。

しかし、言葉を発する前に、山根の目が輝き…笑った。

僕の後ろを見て、明らかに笑っている。 

「何だ?」

後ろを振り返ろうとした。

「え…」

今まで、気配がなかったのに…今いきなり、後ろから気配を感じた。

僕の首の筋肉が動く前に、僕の耳に…懐かしい声が、飛び込んできた。

それは、数年前までは聞かない日は、なかった声。



「お兄ちゃん……?」

その声に、僕は耳を疑った。


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