天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「う、うそ…お兄ちゃんなの…!?」

驚き震えながらも、喜び…少しかすれた声に、僕の動きは止まった。


瞳が、赤から黒に戻った。

「お兄ちゃんなの!本当に…お兄ちゃんなの!」

振り返ることがでぎず、駆け寄ってくる気配だけを感じながら、僕は叫んだ。

「近寄るな!綾子!今は危険だ!」

「お兄ちゃん!」

「赤星!」

綾子の声と、アルテミアの声が同時に発せられた。

「赤星!気を抜くな!」

アルテミアは、さらに叫んだ。

僕ははっとして、山根達を見た。

しかし、山根達は何もしない。ただ笑っている。

「!?」

僕は、場の違和感を感じた。

しかし、そう感じた時には、遅かったのだ。

「赤星!その場から離れろ!」

アルテミアが、命令口調で叫んだ。

「え?」

反射的に、動こうとしたが、

僕は動けなかった。

「な?」

僕は絶句した。

自分の胸から、刃が飛び出してきたのだ。

「さすがの…バンパイアも、心臓を刺されたら、駄目でしょ…」

耳元に、綾子の非情な声が聞こえた。

僕は、後ろから剣で刺されたのだ。

信じられないことに、綾子から。

「え…」

まだ状況が、判断できない僕の背中から、刃が抜かれ、

胸から鮮血が、飛び散った時、僕はやっと理解できた。

「綾子…」

血を吹き出しながら、僕はやっと振り返った。

そこには…年を重ねたが、妹の綾子が、冷笑を浮かべ、立っていた。

血のついた剣を持って。

「ど、どうして…」

崩れ落ちる僕の後ろで、拍手が沸き起こった。

「素晴らしい!」

興奮して、明らかに拍手しすぎている山根は、

一歩前に出ると、片膝を地面につけた。

「素晴らしい!」

他の五人も片膝をつける。少し遅れて、宮島も片膝をつけた。

山根は、恍惚の表情で、僕の向こうに立つ綾子を見上げ、

頭を下げた。

「素晴らし過ぎる!我が女神……テラよ!」


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