天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「なぜ助ける?」

沙知絵の質問に、リンネの背中から、飛び出したアイリとユウリも、

跪きながら、リンネの背中にきいた。

「リンネ様…こやつは、我々にとっても、憎むべき敵」

アイリは、意識を失い倒れている赤星を睨んだ。

「こやつによって、不動様も倒され…妹君であるフレア様も…」

ユウリの言葉の途中で、リンネは立ち上がり、振り返った。

「こんな死にぞこないにとどめを刺すことは、炎の騎士団長であるあたしのプライドが、許さない!」

リンネの体が赤い炎から、青白い炎に変わる。

その熱気に、炎の魔神であるアイリとユウリが、汗をかく。

沙知絵はあまりの迫力に、怯んでしまう。意識せずとも、一歩下がってしまった。 

「それに、こやつとの戦いは、この世界ではないわ」

リンネはそう言うと、三人に微笑みかけた。

リンネの体温が下がり、普通の人の肌色に戻る。


「そうかな?テラに、殺されるかもしれないぜ?」

沙知絵は汗を拭わずに、強がってみせた。

「それは…あり得ないわ。彼の中には、天空の女神がいる」

リンネは、ちらっと赤星を見ると、

「彼女がその気になれば…この星を、破壊することも可能よ」


「な!?」

沙知絵は、リンネの言葉に絶句した。

(だけど…)

リンネは、前を向いた。

(彼女は、それをしない)


リンネは心の中で、笑った。

(なぜなら…それは、再び…赤星浩一と、戦うことを意味するから…)

リンネは、跪くアイリとユウリの間を通り抜け、

沙知絵の横を微笑みながら、通り過ぎた。


(赤星浩一…)

もう振り返ることは、ない。

リンネは目をつぶった。

(フレアの…愛した男…)

リンネの目の端に、少し涙が見えたが…すぐに、蒸発した。

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