天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
赤道近くの島まで、テレポートした瞬間、僕の魔力はすべてなくなった。

やはり、心臓が完全に治るまで、本来の力は発揮できない。

泉の上空に現れた僕は、そのまま落下し、

水面から激しい水しぶきが、上がった。

その中から、マーメイドモードになったアルテミアが現れ、尾っぽが跳ねた。


水面に浮かび、アルテミアは天を見た。

ここは、まだ真っ暗だったけど、天を覆う星々が、異様に明るい。

「アルテミア…」

静かになった水面に、アルテミアだけが浮かんでいた。

「しばらく…休め…。ここ何日かは、まともな戦闘は、できない…」

アルテミアはただ…天を見上げていた。掴めそうなくらい近い星々を。


「アルテミア…」




「赤星…」

アルテミアは星を見つめながら、言った。


「もう…お前は戦うな。やつらの相手は、あたしがする!」

アルテミアは星々を見つめながら、唇を噛み締めた。


「それは…無理だよ」


「無理じゃない!あたしが、本気を出せば…すぐに終わる…」

アルテミアは握り締めた両拳を、天に突き上げた。

「アルテミア…」

「それに…相手は、お前の妹だぞ!兄を、後ろから刺す兄妹なんて…」

アルテミアは、二人の女神を思い出していた。姉である彼女達は、圧倒的な力で、アルテミアを殺そうとした。



「アルテミア…」

僕の声を無視して、アルテミアが叫ぶ。

「あたしが、すべて終わらせてやる!」

アルテミアの瞳が、赤く輝き……ブロンドの髪が、漆黒に変わっていく。

「アルテミア…」

僕はそれでも、アルテミアに話し掛けた。

「アルテミア…」

僕もピアスの中から、空を見た。空を覆い尽くす程の星々の輝きは、夜を忘れさせる。

僕はゆっくりと、言葉を発した。

それは、心からの…僕の願いだった。

「アルテミア……」

僕は、アルテミアに願った。


「人間を憎まないでほしい…」

それが、たった一つの僕の願いだった。
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