天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
現場検証を完全に終え、

わかったことは、被害者の身元だけだ。


後藤は警察署で、この五年間…四人の被害者に、共通点はないかと探した。

しかし、まったく共通点は見当たらなかった。


「あるとすれば…女ってことくらいか」





次の日、後藤は現場に戻った。

何度、足を運んだことだろうか。

そこには、何もない。

事件現場に、新しい多数の花束が、供えられているだけだ。


後藤は花束に頭を下げ、坂を降りた。なだらかな坂は、少し曲がっており、坂の下は見えなかった。


後藤は、よれよれのグレーのスーツのズボンのポケットをまさぐり、煙草を探した。

「うん?」

坂の下に、花を供え…いつのように、手を合わせて座っているあの男がいた。

そこには、小さな祠があった。

「ああ…」

後藤は足を止め、頭を下げた。

男は顔を、後藤に向け、

「捜査ですか?」

立ち上がった。

眼鏡の中から、見える優しい目が、後藤に向けられていた。

後藤は、逆光の為、目を細めた。

「毎日…花を供えられているそうですね」

後藤の言葉に、男は苦笑して、

「それくらいしか…できないですから」



後藤は、最初の事件の時…一応、彼を疑った。彼氏であり…事件後、わざわざこの近くに、引っ越してきた男を、後藤は疑った。


しかし、毎日…365日花を供え、五年間手を合わ続ける男の姿に、いつしか疑いは晴れていった。





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