天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
人混みに佇みながら、神野は探していた。

人ではない者を。


「神野さん…」

じっと立っている神野からは、殺気のような者が漂っていた。

だから、普通の人は避けていくが、意気がった男ははあ〜っと、顔を近付けてくる者もいたが、神野の刃物のような目に、すぐに視線をそらした。

そんな神野に、近づいてくる明菜に、

通り過ぎていく人々は、驚きの目を向けた。

「少し…場所を変えましょう」

明菜の言葉に、神野は視線を人混みに向けたまま、

「沢村さん…。俺には、時間がないんだ」

神野は右腕の付け根を、触った。

沙知絵の腕を移植された肩口は、魔物細胞に侵食されていた。

これが、体を覆う時、

神野は、自らの命を断つつもりでいた。

その前に、神野は…恋人であった沙知絵を見つけ、

彼女を、殺さなければならなかった。

「あいつは、苦しんでるはずだ…。化け物になったことを…」

神野は、右手を視線を落とした。

自分のものではない腕。


「神野さん…」

明菜は、これ以上かける言葉はない。


「沢村さん!」

突然、神野の口調が変わった。

神野の右腕が震えていた。

「いるぞ!」

神野は、目を人混みに向け、怪しい人を探す。

規則正しい人の流れを、斜めに渡る男がいた。

神野と明菜は、人混みをかきわけて、その者の後を追う。



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