天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
今は、あまり空を見上げなくなった。



いつの如く…カウンターの中でコーヒーを作っていたマスターは、ふと…昔を思い出していた。

空から来る恐怖…。

それを体験したのは、日本と英国だけだ。



カラン…。

小さな音を立てて、扉が開き、狭い店内に、美奈子が入ってきた。


「この前の…味が、忘れられなくて…」

真っすぐに、カウンターに座った美奈子を、マスターは笑顔で出迎えた。


「味も…思い出ですから…」

マスターは、美奈子用のコーヒーを入れだす。

美奈子は、マスターの手付きを見つめながら、

「ここって…いつ頃から、営業してるんですか?」

美奈子の質問に、マスターは微笑みながら、

「日清戦争の前ですよ」


「え?」

美奈子は、素っ頓狂な声を上げた。

「そ、そんな…昔から…」

「はい」

マスターは、美奈子の前にコーヒーを出した。




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