天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
僕は、病院内をゆっくりと徘徊した。

別段、おかしなところはない。

建物自体は。


しかし、通る患者を覗いて、医師や看護婦は……。

(人間ではない)

僕は、通り過ぎる医師や看護婦の見せる笑みに、吐き気を催した。



「ここはね……大切なの」

僕の目の前に、車椅子に座った少年が現れ、上目遣いで僕を見た。

「僕はもう…死ぬはずだったんだだよ。心臓が弱くて…だけどね…」

少年は、パジャマの上着のボタンを外すと、上半身を僕にさらした。

そこに咲く一輪の花。

「これを植えてから…僕は生きれるようになったの」

少年の肌は、緑がかっている。

「こ、これは……」

絶句する僕の耳元に、先程の医師の声が聞こえた。

「ここには、二種類の患者がいる」

いつのまに、後ろを取られたのか…僕にはわからなかった。

僕は慌てて、横に飛んで間合いを取った。

てかりはさらに増し、医師は笑い続ける。

「最初は、治した患者を殺す…ただ、それだけだった。完治し、喜びに満ちている人間を、一瞬にして絶望にたたき込み…殺す。ただそれだけだった」

医師は、病院内を見回した。

「だが…ある日、私は気付いた。人間の生きるという執着……いや、生きるではないな…。死にたくないという欲望にね」

医師の手が、緑色に変わると、分裂し、細かい枝のようになる。

「人でなくなっても、死にたくという叫びにね!だから、与えてやったのだよ。魔物の体を!移植してね。ただし!」

医師の枝が伸び、僕の首に巻き付いた。

「お前のように、魔獣因子を持つ者や、静寂な肉体には、移植することができない」


「い、移植できない…人達は、どうなる?」

僕は、枝を握り締めた。

「魔獣に目覚める者は、目覚めさせ…洗脳し、我々の兵士にする。静寂な者は、我々の栄養源になってもらう」



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