天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「くそ…」

テレポートした場所は、梨加の部屋のそばだった。

もう正体は、ばれているし、ここから離れる訳にはいかない。

逃げる理由もなかった。

僕が本気をだせば、ここを簡単に破壊できる。

しかし、それもできなかった。

(どうしたらいい…)

悩んでいると、梨加の声が聞こえてきた。

部屋のドアが、少し開いていた。隙間から、明かりが漏れていた。

「赤星くん?まだ、病院にいたの…何かあったの?」

何時か分からないけど…少なくとも、面会時間は過ぎているはずだ。

僕は、目をつぶると、

「ごめん……ちょっとぼおっとしてただけなんだ…。もう帰るよ」

僕は、その場から歩きだそうした。


「待って……」

微かな声で、力強く止める声がした。

僕は、足を止めた。

「…どうしたの?」

僕は、体を梨加の部屋の方に、向けた。

ドアを開けることなく、隙間に、体を近付けた。

返事はすぐにはなく…

ただ静けさだけを感じていた。

僕は、開いているドアを閉めようと、手を伸ばした。

その時、声がした。

「……明日、手術することになったの…」



「え!」

僕は、思わず手を止め、声を上げた。

「そ、そ、それは…」

僕は、ドアノブを握ると、ドアを開いて、中に入った。

「だ…」

め…と最後まで、言えなかった。

満面の笑みを浮かべた梨加が、無菌室のベットをでて、ベットを囲むビニールの壁に手を当て、立ち上がっていた。

「うそよ」

梨加は、笑った。

「よ、よかった…」

ほっと胸を撫で下ろした僕に、

梨加は、にこっと笑った。

「それが、うそ」

「え?」

「本当は…今日、手術したの」

梨加の言葉に、僕は絶句し、

「な」

梨加に近づいた。

ビニール越しに、梨加と向き合い、

「どうして…」

僕の悲しげな瞳に、梨加は軽く驚き…

また笑顔を向けた。

「心配しないで。一応、手術は成功したの。でも、まだ治った実感はないけど」

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