天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
ピアスの声は、非情なる現実を、僕に突き付けた。

「この手術は、移植と言うより…融合…いや、侵食だ!余程の意志がないと…逃れられない」

その言葉が、終わるか終わらない時に、

梨加の絶叫が、こだました。

体が、わなわなと震えて、痙攣を始めた。

「始まった…侵食が」


「あああっ!」

激しく悶え、身を反らした梨加の首筋に、血管ではない…植物の根のようなものが、できた。それは、じりじりと移動している。

「赤星!あれが、脳まで達したら、彼女の意識はなくなり…魔へと変わるぞ」

ピアスの声にも、返事をせず、僕は…ただ梨加を見つめた。

「早すぎる!間に合わない……赤星!彼女はもう…助からない!魔になる前に、殺せ!せめて、人として殺してやれ!赤星!」


僕は、両手を握り締め、血が出る程…唇を噛み締めた。

「赤星くん……。もし…あるんだったら……あたしを、こことは……違う……世界に……連れて行って…」

苦しみながら、赤星に手を伸ばす梨加から、思わず目を反らしそうになったけど…僕は、自分で止めた。

「僕のせいだね……」

僕の瞳から、涙が流れた。

「僕が…ブルーワールドのことを話さなければ……君が、夢見ることもなかった…」

「赤星くん?」

苦しみながらも、梨加は赤星の涙に気付いた。

僕は一歩前に出た。

「君の心は……いつか連れていってあげる。だから…」

僕の瞳が、赤く光った。

「さよなら…。佐久間さん…」

「え…」

僕の瞳の光に、照らされた瞬間、

梨加にかけた魔法が解けた。

「え?え?え……あなたは、誰?」

梨加は驚いた顔で、僕を見た。

僕は涙を拭い、

「僕は……バンパイアだ」

そして、微笑みながら、手を伸ばした。

ビニールの壁を突き破り、まだ侵食されていない…首の付け根に、軽く爪を突き刺すと、

「だから…血を貰うよ」

一瞬と抜き、指先についた血を、僕は舐めた。

「え」

梨加が目を見開くのと、根が首から上を侵食したのは、同時だった。


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