天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「ぎゃあああ!」

人としての最後の絶叫をあげると、

梨加の全身を覆っていた根が、消えた。

反らしていた体を、ゆっくりと起こすと、梨加は……僕を見て、にやりと笑った。

その笑みからして、もう彼女ではなかった。

「赤星浩一!我が女神の名において、最後の警告を発する!」

僕は、鼻で笑った。

「最後の警告?我が女神だと?それは、リンネか!それとも、舞子か!」

僕の言葉に、今度は梨加が笑った。

「そのような雑魚とは、違う!」

「何?」

梨加の両手の指が、木の枝のように伸びる。

「我らの女神の名は……大地の女神のテラ」



「大地の女神テラ?」

僕は、その名を知らなかった。

ブルーワールドにいる時も、聞いたことがない。

「女神は、三人しかいない!大地の女神だと、どこかの雑魚が、この世界で勝手に、名乗っているだけだろうが!一体どこの…」

ピアスの声を遮るように、僕は前に出た。

「もういいよ…そいつが、誰でも…」

呟くように言う僕の手に…どこからか飛んできた2つの物体がおさまると、クロスさせた。

すると、それは十字架のような剣になった。

「何をする気だ!」

驚く梨加が、慌てて両手の枝で攻撃しょうとした。

しかし、その動きよりも速く、僕は手を突き出すと、一瞬にして間合いをつめ、無菌室のビニールの壁を突き抜けると、

剣は梨加の胸に、突き刺さった。

「心配するな…痛みを感じる時間も与えないから…」

僕の言葉が、終わるより速く、

梨加の体は、消滅した。



「赤星……」 

しばらく剣を突き出した格好で、僕は固まっていた。

「ううう……」

僕は、嗚咽した。

崩れ落ちるように、両膝を床に落とした。



「ごめん……」

僕は泣き崩れた。

この病院にいる人々を救う為に、僕はここに来た。

なのに、誰も救うことなんてできない。

(僕は、誰も救えない)

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