天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「……ああ…」

梨加の顔が、脳裏に浮かんだ。

その笑顔を救えなかったことに、また僕の心が痛んだ。

軽く嗚咽する僕に、男の子はじっと、見つめながら言った。

「僕達がいけなかったの?」

もう何も言えなくなった僕に、枝は伸び、さらに絡み付いた。


「…もう…自分を責めなくても、いいのよ……。一生ここで、僕達に、力を与えてくれたら」

僕の全身を、隙間なく枝が絡み付き、先が全身に突き刺さった。

「太陽のバンパイア…我らには、相応しい…ハハハハ!」

高笑いする医師の勝ち誇った表情が、

すぐに強張る。

絡み付いた枝は、駒切りになって、下へと落ちていた。

「てめえは、最低だ」

僕がいた場所の上に、

金髪の少女が、浮かんでいた。

その姿を見て、医師達が震えだした。

「アルテミア!」

美しきブロンドに、白を基調とした服装。

その姿は、まさに天使。

ゆっくりと、床に降り立つと、周囲にがんを飛ばした。

「アルテミア…天空の女神…」

「魔王ライの娘にして…裏切り者」

医師や患者達が一斉に、同じ言葉を発する。

「ねえ…お姉ちゃんは…」

男の子が、アルテミアの前に降り立った瞬間、アルテミアの蹴りが男の子の体を、吹っ飛ばした。


「何!」

躊躇いもなく、子供を蹴ったアルテミアに、周りが騒めく。

「フン」

アルテミアは鼻を鳴らすと、

「赤星!こいつらは、もう人間じゃない!例え、どんな姿をしてようが!」

アルテミアが持っていた剣は、分離し、トンファーへと変わる。

「こいつらが、意識を支配されたとしても…こいつらが、望んだことだ」

ゆっくりと、腰を落とし、構える。

「あたし達がここに来る前だし…止めれる訳がない!梨加って女だって、勇気を出して、明日の為に、手術を受けたんだ!」

アルテミアは、寝ている患者達に絡み付いている根を、切り裂く。

「お前が悪いんじゃない!」

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