天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
店を二人で出て、僕は男の後ろをついて行った。

男の家は、カフェから離れておらず…2、3分歩いてたら、閑静な住宅地の中の小さな一軒家だった。

「さあ!どうぞ、どうぞ」

門を開けると、すぐに玄関だった。

男に促されて、門をくぐった瞬間、微かな死臭がした。

一歩下がると、まったく臭いがしない。

(これは…)

門をくぐらなければ、臭いがしない。

僕は、鉄でできた黒い門の上の空間に、手を当ててみた。

(結界のようなものはない…しかし)

明らかに、おかしい。

「何してるんですか?」

玄関のドアを開けた男は、僕の行動に気付き、

少し考え込むと、手を叩いた。

「ああ!あなたの星の儀式みたいなものですか!」

「ええ…まあ…」

曖昧な返事をして、僕は慌てて玄関に向かって、歩きだした。

「お邪魔します……!?」

家に入った瞬間、強烈な血の臭いに、思わず僕は動きを止めた。

「おや?」

男は、僕の顔を見て、感心した。

「綺麗な目ですね」

僕は心の中で、舌打ちした。

どうやら、赤くなってしまったようだ。

(バンパイアの本能が…反応したか!)

最近、血を吸っていないところに、この強烈な臭いだ。

「やっぱり、あなたは…お仲間だ!さあ、あがって下さい」

靴を拭うとする僕に、男は笑いかけた。

「土足で結構ですよ!我々に、靴を脱ぐなんて慣習はないでしょ!それとも何ですか?郷にいれば、郷に従うって、やつですか?」


僕は、邪魔くさくなって、靴のまま家に上がった。


「さあさあ…お見せしましょう!私の研究成果を!」

玄関からのびる廊下のすぐの右手に、ガラス戸があった。

それを一気に、開けると、

僕は思わず、顔を背けた。

そこは、さながら…拷問場だった。

天井から、吊らされた数人の男女。

転がる猫や…犬の死骸。

すべてが、真ん中から、裂かれ…内臓を抉り出されていた。

「見て下さい!」

男は興奮しながら、その部屋のテーブルに置いてあったスケッチブックを、僕に見せた。

「これが…私の研究ですよ」



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