天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「あれは…何だったんだ?」

男の家から離れ…歩く僕に、アルテミアは聞いた。

「人間だったはずだ……いきなり、変幻した」



「まだ…完全ではなかった…。だから、魔の部分だけを、焼き尽くしたが…命を助けることは、できなかった…」

僕は、無表情に前を見ながら、夕方の出勤帰りのサラリーマンや、学生とすれ違っていく。

夕焼けの赤さが、眩しかった。

「あれは…ブルーワールドから来た魔ではなかった…」

アルテミアの言葉に、僕は頷いた。

「一体…何が起こっている」

僕は、足を止め…沈んでいく太陽と反対に、姿を見せはじめる星に、目をやった。

「宇宙人……」

呟いた僕に、アルテミアがきいた。

「どうして…宇宙人なんだ?あれは、どう見ても…魔だろ?」

僕はまた歩きだした。

「多分……」

僕は、光が沈み…夜が訪れる瞬間を、凝視した。

「人とは違う…化け物になった自分を…認められずに…宇宙人にしたのだろう」


「それは、なぜだ?」

「この世界に…化け物には居場所がない。だけど…宇宙人なら、帰る場所がある…かも。あの男は、人間でなくなった自分を…肯定する為に…脳内で、自分を作り出したのだろう」


「宇宙人って……」

アルテミアの言葉に、僕はフッと笑った。

「仕方がないよ…この世界には、もう未開の土地なんてない…。人じゃないものがいるとしたら…宇宙くらいさ」

僕はもう一度、空を見た。

「何が…人以外はいないだ。いるだろうが…」

アルテミアは、ため息をついた。


「いないよ」

僕は、空から人々に視線を移した。

「いや…いると思いながらも…いないと安心してる。でないと、人は闇を歩けないよ」



人は、人でなくなった時…どうするのだろうか…。


うまく紛れることが、できるなら…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

< 59 / 227 >

この作品をシェア

pagetop