天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「なっ」

美香と春奈は、絶句した。

美奈子に促されて、入ってきた女が、あまりにも美しかったからだ。

モデルや、女優…いや、その辺のレベルでは、比べものにならなかった。

絶世の…美女と言ったら、いいのか。

「よろしくお願いします…だよ」

周りには、聞こえないように、ピアスの中から、僕は囁いた。

「よ、よろしくお願いします」

つくり笑顔を浮かべながら、頭を下げた…星野ティアナの正体は、

アルテミアである。

髪と、瞳の漆黒に変え、アルテミアは、この劇団に潜入することとなった。


「突然だけど…彼女も、次の舞台には、出てもらうから!みんな、よろしくな」

美奈子の言葉に、美香と春奈の表情が引きつった。



僕は、ピアスの中から、周りを伺った。

そう……最近は、いつも通り、僕が潜入するはずだった。

しかし、劇団員募集の貼紙を見て、飛び込もうとした僕は、ビルの入口で、美奈子を見かけたのだ。

ほんの数秒の差だった。

美奈子の方が、先にビルに入っていった為、かち合うことはなかったけど、

しばらく僕の動きは、止まってしまった。

「どうした?赤星?」

凍り付いてる僕に、訝しげに、アルテミアがきいた。



「し、し、知り合いがいた…」

この世界に戻ってから、知り合いに会うことは、なかった。

もう五年もたってるから、会ってもわからないだろうと……たかをくくっていたけど……。

「変わってない!」

美奈子は、高校時代と変わったようには見えなかった。

確かに、雰囲気は大人びているが、

間違いない。

「しかし…」

僕は、胸ポケットから、携帯を取り出した。

メールをチェックする。

「やっぱりここだ…」

僕は、携帯をしまった。


(何にでも…なれるあたしは……、人以外にもなれる。だけど…演技続けていると…演技は、本物になる)

意味不明な文面だが…僕はどこか、引っ掛かった。

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