天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
僕に送られてくるメールは、すべてが…やつらに関わってるものではない。

悪戯や、興味本位が多い。

だけど、その違いはすぐにわかった。

この世界に巣食い、一番に束縛しているものは、電波だ。

飛び回る電波や、つながるネット。

人は、自由だと思っているが……この世界は、見えないものに、縛られていた。

(もしかしたら…ブルーワールドより、自由がないのかもしれない)

そのネットの網が、電波で繋がっているのなら、

天空の女神であり、雷鳴と風を自由に操るアルテミアが、探ることは、容易だった。

「モード・チェンジ」



思念を、電波そのものに変え、アルテミアはメールから、足跡を追った。

この能力があるなら、すぐに索敵ができると思うだろうが……

その情報量は、半端ではない。

電波の海に、溺れそうになる。

さすがのアルテミアも、すべてを把握するなんて…無理だった。

ターゲットを決めて、送った相手くらいなら、見つけられた。


「この世界は…変わってるわね。まるで、世界が2つあるみたい」

アルテミアの感嘆のため息に、僕は頷いていた。

(確かに…ネットは、もう一つの世界だ)

「だけど…問題なのは、そこだけに、存在できないってことよ」

アルテミアは、携帯を閉じると、ため息をついた。

「それは、どういうこと?」

アルテミアは、肩をすくめ、

「所詮行けるのは、精神や気持ちだけだ。肉体は、ここにある。あまりのめり込むと…立ち直れなくなる」

アルテミアは、美奈子が入っていったビルの入口に立ち、腕を組んだ。

「よし!」

頷き、そのままビル内に、突入しょうとするアルテミアを、

慌てて僕が止めた。

「アルテミア!今のままじゃ、目立つよ!」

事実、アルテミアの周りは、足を止めた男の視線に囲まれていた。

ブロンドの女神である。

人々の目を引くのは、当たり前だった。

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