天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「え?そ、そんなこと…ないと…」

思いもよらない美奈子の言葉に、しどろもどろになりながらも、アルテミアは笑顔で誤魔化した。





それから、数分後……アルテミアは、美奈子に紹介されていた。

いきなり、役の候補と言われたことより、

僕は劇団員の中に、明菜を見つけたことに、ショックを受けていた。

ブルーワールドで別れてから、もう五年は立つ。

ちゃんと帰れたのか、心配していたけど…大丈夫だったようだ。

幼なじみで、高校まではずっと一緒だった。

数年ぶりに、大人になった明菜を見ると、自分だけ取り残されているように感じた。

時の流れに…。

事実、僕はあまり歳を取っていない。


明菜以外の劇団員は、アルテミアに見惚れている。

しかし、明菜だけは…驚きながらも、どこか…探るような目で、アルテミアを見ていた。

(明菜は…アルテミアを知らないはずだ…)

僕はピアスの中から、明菜を見つめた。

(!?)

明菜と目が合った。

いや、目が合うはずがないが……明菜は、ピアスを見つめていた。

(なんか……ヤバイ) 

僕が焦った時、

美奈子が、アルテミアの方を向いた。

「星野さんは、今日は裏方で、見学して下さい」

「あ、はい!わかりました」

なぜか、がちがちに緊張しているアルテミア。

美奈子はそんなアルテミアを、少し見つめると、団員の方に、顔を向け、

「明菜!星野さんに、説明して上げて!」

「あ…はい!」

明菜は驚きながらも、すぐに返事をし、アルテミアに近づいていく。

「ここの機械説明をして、後は…初日だから、練習を見学して貰うわ」

美奈子は、それだけ告げると、他の部員に歩み寄る。

「まだ…時間はあるけど、完璧に仕上げたいの!気合をいれて、やるわよ」

美奈子の号令で、稽古は始まった。

その様子を、姿勢を正したまま見ていたアルテミアを、

隣で明菜が、じっと見つめていた。




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